「海月姫」

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「傷付くことを恐れずわたしに触れてほしい」



この絵はクラゲを描きたいという思いと、せっかく透明水彩を使っているのだから、絵の具の特徴を活かしたい、思いが組み合わさってできた絵です。

 

この絵は漫画の「海月姫」とは関係ありません。ちなみに漫画の存在は絵を描いてから知りました。

 


わたしはキノコの見た目が苦手です。クラゲもキノコと似ているため、本当は苦手です。でも、水族館でライトアップされているミズクラゲなどはとても幻想的で、遠目に見る分には好きです。
あの彩りにあふれたクラゲを自分でも描いてみたくて、この絵ではクラゲに様々な色を乗せています。
わたしは実在する生き物などを描く時には基本的に写真の資料を集めて、それを参考にして描くのですが、この絵を描くためにクラゲを調べる時かなり勇気を振り絞った記憶があります。

 

クラゲの生態は謎めいた部分が多く、創作するのにはうってつけなので、いつかまたクラゲの絵を描きたいと思っていますが、その時はまた辛い思いをしながら画像検索するのでしょうね…


わたしはこの絵を描いた頃に塩を使う技法を知り、実際に画面に塩を撒いてみました。
料理する気?とか、除霊でもするの?と思うかもしれませんが、実は色を塗って乾かないうちに塩を撒くと、塩が水を吸って、結晶のような綺麗な模様ができます。

塩はどんな塩でも構いません。わたしが使ったのもキッチンにあった普通の食塩です。ただ、粒が細かい方がいいらしいので、粗塩は向かないかもしれません。

塩の種類よりも塩を撒くタイミングの方が大事で、画面の水分が多すぎたり少なすぎると、塩が上手く水分を吸ってくれません。
塩を撒いてずっと放置していると、塩が紙から剥がれなくなって、砂のような質感になってしまうので、その点も注意です。描く絵によってはその方が良い味が出せるのかもしれませんが…


この絵では塩が上手く水を吸ってくれなかったどころか、塩を紙から落とす時に紙の表面も剥がれてしまいました。女の子の両脇にいるクラゲを見ると分かるかと思います。大失敗です。
というか、透明感を出したいのに塩を使う時点で失敗してるようなものなんですけれど……挑戦は大事ですが、ちょっと無計画すぎました。


もう少し上手くいくとこんな感じになります。

 

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特にハートの絵は、偶然にも、ハートの真ん中がひび割れているような絵になって感動しました。水彩は偶然によって面白い画面になることがあるので楽しいです。



わたしはクラゲに刺されたことはありませんが、クラゲに刺されると痛いとか、死に至るほど強い毒を持つクラゲもいると聞きます。

それは捕食や自己防衛のためなのですが、自分が生きるために他の何かを傷付けるというのは、過酷な自然環境の下で生きるには仕方ないことなのでしょうが、悲しい生き方のような気もします。


もしクラゲが人間のような心を持っていたら。傷付くことを避けるために、自らが誰かを傷付け、かえってクラゲ自身の心が傷付いていくのではないか。そして、それを知りながらも、傷付けずにはいられない。そういう生き方しか知らないから。

わたしに触れると傷付くから触れないで、でも本当は触れてほしい、そんな絵です。

 

 

この絵はラフも下描きも残っていました。

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タイトルは絵を完成させた後に決めました。

クラゲを漢字で書くと「海月」ってすごく素敵だなあ、と思って漢字表記にしています。海月「姫」というのは、人魚姫的な意味を込めて付けました。ラフの方に書かれた文を見ると、人魚姫を意識していることがよく分かりますね。

 

 

これはこの記事を書く上で改めてクラゲについて調べている時に知ったのですが、クラゲの触手は刺激を受けると反射的に棘を射出してしまうらしいです。

つまり、相手を傷付けないようにしたくても、出来ないということです。

 

この絵を描いていた当時のわたしはそんなことは知らずに、この子は運命に逆らうことは出来ないから、相手を待つしかないんだよなあ、とぼんやり思いながら描いていたのですが、このことを知って、わたしの考えは間違っていなかった、と思って少しテンションが上がりました。

 

 

 

変えることのできない運命に対し、それでも抗うか、仕方ないと諦めるか、助けが来ると信じるか。どれが正しいのでしょう。